顎の骨が足りない・少ない方へ
インプラント治療を成功させるには、顎の骨の厚みや高さが重要なポイントです。インプラント体の直径はおよそ3〜6mm、長さは4〜21mmが一般的で、それをしっかり支えるには、さらに2〜3mm程度の十分な骨量が求められます。
しかし、歯を失ったまま長期間放置していた方や、重度の歯周病で歯を失った方では、骨が痩せてインプラントを安定して埋め込めないケースも少なくありません。こうした状態で無理に埋入を行うと、後に脱落したり、周囲に炎症が生じるリスクがあります。
そうした場合でも、治療を諦める必要はありません。現在では「骨造成」と呼ばれる技術が確立されており、不足した骨を自家骨や人工骨で補うことで、インプラント治療が可能になります。
骨造成にはさまざまな手法があり、顎の状態や治療方針に応じて最適な方法を選択いたします。
KU歯科クリニックでは、CTによる詳しい検査をもとに、安全でしっかりとした治療をご提案しています。他の医院で断られた方や、骨が足りないかも…と不安な方も、どうぞ安心してご相談ください。
顎の骨が少なくなる主な原因
歯周病の進行
歯周病が進むと、歯を支えている骨が少しずつ壊れていきます。初期のうちは気づきにくいのですが、放っておくと歯が抜けてしまい、骨もどんどん減ってしまいます。
歯を失ったまま放置していた場合
歯を失った状態で長期間放置すると、噛む刺激が骨に伝わらなくなり、顎の骨は徐々に痩せていきます。これは自然な生理的変化で、時間の経過とともに骨吸収が進行し、インプラント治療が難しくなる原因となります。
先天的に顎の骨が薄い場合
もともと骨の量が少ない方もおられます。特に上顎には「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞があるため、構造的に骨が薄くなりやすい部位です。上顎洞が低い位置にある方は、インプラント治療を行うために、サイナスリフトなどの骨造成が必要になることがあります。
合っていない入れ歯を長期間使っていた場合
入れ歯が合っていないまま使用を続けると、噛んだときの力が局所的にかかりやすくなり、歯ぐきや骨に負担をかけてしまいます。これが長く続くと、顎の骨が吸収されて痩せていき、インプラントを支えるには不十分な状態になることがあります。
主な骨造成の種類
GBR(骨誘導再生法)
GBR(Guided Bone Regeneration)は、インプラントを安定させるために必要な骨の厚みや高さが不足している場合に行う再生療法です。
特に上顎や下顎の骨の「外側」に新たな骨を作り出す際に用いられます。歯を抜いた部位に感染があった場合や、前歯のように骨が薄くなりやすい部位では、インプラントの埋入に十分な骨幅が確保できないことがあります。GBRでは人工骨や自家骨を使用して、必要な骨量を再構築し、インプラント治療を可能にします。ただしこの方法は高度な技術を要し、大規模な骨造成を行う際には、専門的な知識と経験を持つ医院でなければ対応が難しいとされています。当院では、これまでに多数の骨造成を手がけてきた実績があり、専門的な知識と確かな技術で、安心・安全な治療をご提供しています。
ソケットリフト
ソケットリフトは、主に上顎のインプラント治療で骨の「高さ」がわずかに足りない場合に行う治療方法です。インプラントを埋めるための穴から上顎洞の粘膜を持ち上げ、そこに骨補填材を注入して骨の高さを補います。この術式は小規模な骨造成に向いており、比較的低侵襲で行えるため、インプラントの埋入と同時に処置を行うことも可能です。治療期間の短縮が期待できる一方で、大きな骨量の不足には対応できないという特徴があります。
サイナスリフト
サイナスリフトは、ソケットリフトと同様に上顎の骨の高さが不足している場合に行われる手術ですが、より大きな骨造成が必要なケースに対応できる方法です。頬側の歯ぐきを切開して、上顎洞の側面から骨補填材を注入することで、広範囲な骨の高さを獲得します。大規模な骨吸収が進んでいる患者様でも、サイナスリフトによってインプラント治療の選択肢を確保することが可能です。ただし、ソケットリフトに比べて術後の腫れや痛みが出やすく、インプラント埋入までに一定期間を要するため、治療期間が長くなることがあります。
骨造成をしなくても受けられるインプラント治療
オールオン4・オールオン6
オールオン4・オールオン6は、歯をすべて失った患者様に向けた治療法で、少数のインプラントで上顎または下顎のすべての歯を支える方式です。
4本または6本のインプラントを骨の密度が高く、厚みのある部位に埋め込むことで、12本前後の人工歯を一体化させて固定します。骨造成が必要な部位を避けて埋入位置を決められるため、骨が足りない方でも治療が可能なケースが多く、治療期間や費用の面でも大きなメリットがあります。
インプラントオーバーデンチャー
インプラントオーバーデンチャーは、2本ほどのインプラントを利用して入れ歯を固定する治療方法です。通常の入れ歯と異なり、しっかりと固定されるためズレや外れの心配が少なく、食事や会話も快適になります。
インプラントの本数が少ないため、骨造成が必要となるリスクも低く、顎の骨がある程度残っていれば適用できる可能性が高い治療です。また、取り外しが可能で衛生管理もしやすく、コスト面でも患者様のご負担を抑えられるのが特長です。
歯茎が下がってきた方への「軟組織造成」
インプラント治療において、歯ぐきの健康とボリュームは非常に重要です。特に歯ぐきが痩せてきたり、インプラントの人工歯根が露出してしまった場合、見た目だけでなくブラッシングやメインテナンスのしやすさにも影響を及ぼします。
こうした問題を改善するために行うのが「軟組織造成」です。これは患者様ご自身の口腔内から採取した歯肉や結合組織を、痩せた部分に移植することで、歯ぐきの厚みと形態を回復させる治療です。当院では、状態に応じて2つの方法を使い分けています。
FGG
FGG(Free Gingival Graft)は、主に歯周病などで後退してしまった歯ぐきを補うために行う手術です。
患者様の口蓋(上あごの内側)などから健康な歯肉を採取し、それを痩せてしまった歯ぐきの部位に移植します。この方法によって、失われた歯ぐきを再建し、歯根の露出をカバーすることで歯周病の進行を予防する効果が期待できます。また、歯ぐきがしっかりと形成されることで、ブラッシングがしやすくなり、清掃性の向上にもつながります。
CTG
CTG(Connective Tissue Graft)は、審美性と機能性の回復を目的とした軟組織移植です。患者様ご自身の結合組織を採取し、歯ぐきが薄くなったり、歯根が露出している部位へ移植します。インプラントの周囲に十分な歯ぐきが確保されることで、見た目が自然に整うだけでなく、インプラントを長持ちさせる土台にもなります。